「オースチン・ヒーレーが本当にかわいくて仕方ない」と嬉しそうに語ってくれたのは、今年でデビュー20年を迎えるクレイジーケンバンドでボーカルを務める横山剣氏。自ら数々のレースやラリーに参加するなど、大の車好きとしても知られる。そんな横山氏に、車と彼の素敵な関係性について伺う機会を得た。
横山剣氏は現在、数台の車を所有しているがその中でも1956年製オースチン・ヒーレー100/4BN2は"かわいくて仕方ない"という。競技に出る都度、メンテナンスには出すとのことだがインタビューを行った日はちょうど、メンテナンスに出して帰ってきた次の日であった。
「前回はエンジンをオーバーホールをして、今回はキャブ交換その他...昨日、退院したばかりなんです。さみしかったですよ。早く乗りたいです」と語る姿は、どこか遠くへ行ってしまった我が子を心から愛しく思う親のように感じられた。
彼とオースチン・ヒーレーの出会いは子供の頃に遡る。友人の父に連れて行ってもらったサンデーレースで、MGやオースチン・ ヒーレーなどライトウェイトのイギリス車を見て憧れを抱いた。オースチン・ヒーレーのプラモデルも持っていて、昔から好きだったそうだ。そして、その憧れていたオースチン・ヒーレーを購入するに至るきっかけは2011年にあった。
「ラ・フェスタ・ミッレミリアに出ませんか?」という、同じく車を愛する堺正章氏の提案から、横山氏とオースチン・ヒーレーの物語は始まった。 数台候補があった中にいた、真っ黒で左ハンドルの車。かつて、フラット4の小森隆氏が所有していたために真っ黒のボディを 持っていたとのことだ。
「黒い車が好きで僕と趣味が合うんですよ。それに小森さんは格好よくてずっと憧れなんです。小森さんが所有していたこともポイントでしたね」 とのことだ。そして、そのエレガントな姿に惹かれて試乗をかねた走行会へ出た。ミュージシャンの感性にも響いてくるそのエン ジン音にも魅了され、見事に横山氏のもとで可愛がられることとなったのだ。
堺正章氏からスージー・ランという素敵な名前をもらった真っ黒なオースチン・ヒーレー。「カスタムすることも何度かは考えました。でも、やはり車は原型が一番美しいと思うんですよね。これからも行うつもりは無いけれど、いつかもう1台オースチン・ヒーレーを買ってカスタムで違う楽しみ方もしてみたいですね」という密かな野心も持っているとのこと。
「週に1度くらいはご機嫌取りに走らせて血の巡りを良くさせます。時間があれば、本当はずっと動かしてあげたいんですけどね」と語っており、 多忙の中でもいかにオースチン・ヒーレーと過ごすことを願っているのか切ないほどに伝わってきた。街中で同じ車が走っていると、後ろについてうっとりと眺めてしまうとのことだ。
車が持つ芸術性を存分に味わう、真の車好きが自然と行ってしまうことであろう。ラリーや走行会の場では、車の後ろ姿をたくさん見ることが出来ることも楽しみの1つであり、出来るだけ参加したいと望んでいる。 日程さえ合えば、コッパディやスプレンドーレやクラシックジャパンへのも参加を考えているそうだ。
「同じような車がいると、つい手を振ったり、 話しかけにいってしまうんですよね」という横山氏。「車好きの人々は年齢関係なくやんちゃで、おもしろくてお洒落で、人生の楽しみ方を教えてくれる。車好きが集まる場が好きなんです。車があるから、仕事に対しても趣味に対してもアグレッシブになれます」と語る彼も、"人生の楽しみ方を教えてくれる人" の1人であることに違いない。
文:オクタン日本版編集部 Words:Octane Japan 写真:奥村純一 Photography:Junichi OKUMURA
CRAZY KEN BAND「GOING TO A GO-GO」
今年でデビューから20年を迎えたクレイジーケンバンド。彼らが創り上げるグルーヴ感には卓越した音楽性を感じる。様々なジャンルが混ざり合ったサウンドは「クレ イジーケンサウンド」そのもの。オースチン・ヒーレーで はエンジンのサウンドを満喫するが、最近の一押しドライビング曲はSamuel Purdeyの"Lucky Radio"。 風を感じながらドライブするのにぴったりな曲だ。車の中でサウンドチェックも行うという横山氏にとって、車たちもバンドメンバーの1人なのではないだろうか。新作アルバムに収録されているMIDNIGHTBLACKCADILLACという曲は、昔見たローライダーの真っ黒なキャデラックからイメージを受けた曲とのこと。編集部の一押しドライビング曲「棕櫚」も収録された20周年記念新作アルバム「GOING TO A GO-GO」発売中。
【通常版】UMCK-1603
価格:3,000円+税
【初回限定盤】UMCK-9958
価格:7,000円+税
1CD(全形態共通)+2DVD
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