偉大なる先人への決意表明歴史を受け継ぐスペシャルウォッチ

今は亡きウォルター・ランゲへの敬意を込めた特別な限定モデルが誕生した。ここには歴史の荒波の中でもがきながら、A.ランゲ&ゾーネの復興に死力を尽くした創業ファミリーの熱意と愛情がこもっている。

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有名時計ブランドも、ルーツをひもとくと個人経営の時計工房に行きつく。凄腕の時計師は、優秀なビジネスパートナーや息子たちとチームを組んで時計作りに邁進し、コンクールなどに出展。そこで名声を得ることで注文数を増やし、少しずつ規模を拡大していった。規模が大きくなるほど、当初の信念は薄まっていく。だからこそ伝統を重んじる時計業界では、先進的支柱となる"創業ファミリー"の存在は大きい。

さすがに創業ファミリーが経営に参加している老舗ブランドはほとんど存在しないが、その稀有なブランドの一つがA.ランゲ&ゾーネだった。過去形にしたのは、ブランド再興という重責を担っていたウォルター・ランゲが、2017年の1月に逝去されたからだ。

A.ランゲ&ゾーネは1845年に創業したドイツブランド。ザクセンの地に時計産業を根付かせたフェルディナント・アドルフ・ランゲとその息子たち(SÖHNE)は、高精度、高品質の時計作りに邁進し、スイス勢からも一目置かれる存在となった。しかし、第二次世界大戦にて空襲の被害を受け、終戦後は東独政府に接収され国有化されてしまう。既に時計師として活躍していたウォルター氏は西独に移り住み、A.ランゲ&ゾーネというブランドは、歴史の中に埋没してしまった。

ところが1990年に再び針が動き始める。ベルリンの壁が崩壊してドイツが再統一されると、A.ランゲ&ゾーネの再興を開始。その中心人物がウォルターだった。彼は失われた伝統を掘り起こし、時計の礎を築いた。1994年に復興第一弾モデルが発表され、それ以降ドイツのみならず高級時計のリーダーとして名声を得ている。

ウォルター亡き後も、彼の高潔な精神と理念は、ともに働いたスタッフたちに受け継がれている。その強い意志を具象化させたのが「1815"ウォルター・ランゲへのオマージュ"」だ。

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6時位置のスモールセコンドとは別に、センターにジャンピングセコンドを搭載。2時位置のプッシュボタンを押すと作動し、一秒ごとに針がジャンプしながら時を計測していく。この機構は1867年に考案された。なお、限定生産本数は、ウォルターが会社を再登記した19"90"年12月9日にちなんで、ピンクゴールドは90本限定。その年は創業から"145"年目だったので、ホワイトゴールドケースは145本。会社再興から、このモデルを2017年12月7日に発表するまでに"27"年の歳月がたっているので、イエローゴールドは27本となる。

このモデルはウォルターの曽祖父で、創業者フェルディナント・アドルフ・ランゲが150年前に考案した「ジャンピングセコンド機能」を搭載しており、創業ファミリーの伝統を受け継いでいくことを高らかに宣言している。

限定モデルのケース素材は3種類で、生産本数はそれぞれの"歴史の節目"を象徴。さらにステンレススティールケースモデルを1本製作し、こちらはオークションピースとなる。

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限定一本のみ製造されているSSケースモデルはオークションにかけられる。なお収益金は青少年支援活動に寄付され、落札者には3種の限定モデルのシリアルナンバー1のセットを購入する権利が与えられるとのこと。

機構、デザイン、販売本数...。全てにウォルターへの敬意が詰まった特別な時計だ。

文:篠田哲生 Words:Tetsuo SHINODA

A.LANGE & SÖHNE
https://www.alange-soehne.com/

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