微細なパーツを組み合わせる超高級時計は、繊細に扱うべきである。しかしリシャール・ミルはエンジニアリングの力で耐衝撃性をカバーし、あらゆる極限状態であっても使える時計を目指した。
リシャール・ミルがスポーツをサポートするのは、単なるマーケティング戦略ではない。プレイヤーが極限状況で使っても壊れない時計を目指すことで、今までにない製品へと辿り着くことができるからだ。F1やテニスなど様々なスポーツのトッププレーヤーをファミリーに迎えているが、2018年はポロのトッププレーヤー、パブロ・マクドナウとのパートナーシップモデル第二弾「RM 53-01」をリリースした。構造と素材で耐衝撃性能に磨きをかけ、内部構造も楽しめる究極のタフウォッチである。
パブロ・マクドナウは、1982年アルゼンチン出身のポロプレイヤー。アルゼンチン・オープンやクイーンズカップなど主要なポロ界のタイトルを獲得し、2010年、2011年にはワールド・ポロ・ツアー・ランキングの第一位を獲得した。ポロ4名でチームを組み、人馬一体となってプレーする。人だけでなく馬にも、アグレッシブさと冷静さの両方が求められるため、試合に使用する馬は7歳までトレーンングを行う必要があるそう。
リシャール・ミルとパブロ・マクドナウとのパートナーシップは2012年に遡る。そもそもポロは紀元前のペルシャで生まれたといわれ、馬を操り、マレットを使ってボールをゴールに入れ合うスポーツ。
馬術、球技、そして激しい接触があるため格闘技の要素も含まれる究極のスポーツであり、競技者はマレットやボールの衝突だけでなく、落馬による衝撃という危険にさらされているというタフな競技だ。
そこで初代モデルとなる「RM 053」は、ポロの激しい衝撃から繊細なメカニズムを守るため、鎧のようなチタンカーバイト製の外殻に包まれていた。しかしこうなると内部を見ることができない。
究極の強度を持ちつつ精密なメカニズムも堪能できる時計を作ることができないだろうか? リシャール・ミルは考えた。幸運だったのは、初代モデルから今に至るまで、リシャール・ミルの進化が止まっていなかったこと。「RM 053」以降に開発された機構や素材を組み合わせれば、目標に達することができるのだ。例えばケース素材は圧倒的に軽くて強度に優れるカーボンTPT®がある。そして衝撃対策は、「RM 27-01」で実現させたムーブメントをワイヤーケーブルで支える手法がある。あとは強度を備える風防だけだ。
風防に使用されるサファイアクリスタルはダイヤモンドに次ぐ硬度を持っているが、それでも、想像を絶するポロの衝撃には耐えられない。そこで目を向けたのが自動車業界だった。リシャール・ミルの創業者でコンセプターであリシャール・ミル氏はレース愛好家で古いレーシングカーのコレクターでもあるのだから、この着想は必然だったのかもしれない。
S.I.H.H会場内のリシャール・ミルブースは、シンプルな内装で統一。マレットとボールをガラスの支柱に収め、ヒビを入れることで強い衝撃を表現している。
激しい衝撃を直接ムーブメントに伝えないために、直径0.27㎜しかないケーブルと10個のプーリーを使って、ムーブメントを宙づりにしている。均等の力で引っ張るために、時計師は最新の注意を払って調整を行う必要がある。
ケース素材であるカーボンTPT®は、極薄のカーボンファイバーシートを何枚も重ねて塊を作り、丁寧に切削してケースの形に仕上げる。その際に層の構造が表面に現れるので個体特有の模様が生まれ、一点モノの価値を作る。
キャリバーCal.RM53-01は二つの地板が存在する。一つはケーブルを固定するための外枠で、その内側にセットした二本のアーチ状ブリッジにパーツを組み込んでいく。手巻き式のトゥールビヨンは6時位置に収まっている。
リシャール・ミルはサファイアクリスタル加工のスペシャリストであるステットラー社の協力を仰ぎ、二枚のクリスタルの間に極薄のポリビニールフィルムを挟みこんだ。これは自動車のフロントガラスに用いられる手法だが、これをミクロン単位の精度が必要な超高級時計に取り入れたのだ。その結果例え激しい衝撃が加わったとしても風防は割れず、最悪でもひびが入るだけで、ムーブメントとパブロの身を傷つけることはない。
究極のタフウォッチを作るために、リシャール・ミルは限界を突破した。常に最高峰へと突き進む姿勢を、「RM 53-01」が証明している。
文:篠田哲生 Words:Tetsuo SHINODA
リシャール・ミル RM 53 -01
トゥールビヨンパブロ・マクドナウ
Cal.RM53-01、パワーリザーブ約70時間、
手巻き、カーボンTPT®ケース、ケース縦49.94×横44.5㎜、
ケース厚16.15㎜、50m防水。世界限定30本。
1億230万円(予価/2018年内発売予定)
リシャール・ミル ジャパン
Tel: 03-5807-8162
URL: http://www.richardmille.jp/
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